過蓋咬合は可愛い?矯正しない方が良いってホント?
こんにちは、名古屋市東区のあんどう歯科クリニックです!
今日は、良くない歯並びとされる過蓋咬合についてお話しようと思います。
みなさんは、過蓋咬合ってご存知ですか?
目次
歯「歯並びが悪い」といっても、種類がある
歯並びや、上下の歯の噛み合わせが悪い状態のことを不正咬合といいます。
不正咬合には、種類があります。
・出っ歯/上顎前突(上あごや上の前歯が出っぱっている状態)
・うけ口/反対咬合/下顎前突(下あごや下の前歯が前に出ている状態)
・乱杭歯/叢生(八重歯などに代表される、歯がでこぼこに並んでいる状態)
・開咬(奥歯は噛みあっているのに前歯は噛みあっておらず、前歯部に垂直的 な隙間がある状態)
・過蓋咬合(上下の噛み合わせが深い状態)
・交叉咬合(数本の歯の噛み合わせが上下反対になっている状態)
・空隙歯列/すきっ歯(歯と歯の間に隙間がある状態)
などです。
詳しくはまた別で記事にさせてもらおうかなと思っていますが、
このように「歯並びが悪い」と言っても色んな種類があるわけです。
特に多いとされるのは、乱杭歯とも言われる叢生です。八重歯もこの叢生に含まれます。
叢生とは、歯が生えるスペースが少なく、でこぼこに歯が並んでいる状態です。
また、出っ歯も不正咬合の中では多くみられます。
ご紹介した種類の中でも、叢生や出っ歯、それに受け口や開咬などは、
パッと見ただけでも歯並びの悪さに気づきやすいと思います。
ただし、今回お話しする過蓋咬合については、歯並びの悪さに気づかないことも多いのです。
また、本来なら良くない歯並びに入るのですが、それでも「過蓋咬合は矯正しない方が良い」と考える人もいるようです。
それはどうしてなのでしょうか?そのお話しもしていきますね。
過蓋咬合とは?
噛んだ時に、上の前歯によって下の前歯が2ミリほど隠れるくらいが正常の噛み合わせとされます。
対して過蓋咬合とは、
噛んだ時に、上の前歯が下の前歯を深く覆って、下の前歯がほとんど見えない状態のことをいいます。ディープバイトとも言われます。
さきほども書きましたが、
過蓋咬合の場合、出っ歯や叢生のように見た目でわかりやすい不正咬合ではありません。
上の歯が綺麗に並んでいれば、歯並びは整って見えるので、
噛み合わせの深さまでは気にならず、本人や家族にも不正咬合だとは気づかれないこともあります。
過蓋咬合になる原因は?
原因は色々ありますが、大きく分けると先天的なものと後天的なものがあります。
〈先天的な原因〉
・遺伝、生まれつきのもの
…歯並びは遺伝するため、ご両親や祖父母に、骨格や歯の異常がある場合は、お子さんも似た歯並びになることがあります。
骨格的には、
生まれつき下あごが小さい・上あごが大きいなど、上下のバランスが良くない場合、過蓋咬合になりやすいです。
また、骨格は問題なくても、歯の位置や歯の傾きの影響で過蓋咬合となることもあります。
〈後天的な原因〉
・奥歯の高さが低くなる、抜けたまま放置する
…虫歯などの理由で奥歯の高さが低くなったり、歯を抜いた後にそのまま放置してしまうと噛み合わせが深くなってしまうことがあります。
乳歯でも永久歯でも起こります。
・下あごが成長しなかった
・下の唇をかむ、吸う
・指しゃぶり
・頬杖をつく
・歯ぎしりや食いしばりをする
…これらの悪習癖があると、歯並びや噛み合わせのバランスが崩れ、過蓋咬合となることもあります。
過蓋咬合は可愛い??
日本人の間では、「八重歯が可愛い!」と言われることも多いですよね。
八重歯がチャームポイントになることもありますし、そういうアイドルの人もいますよね。
でも実は、この「八重歯が可愛い」という感覚は、世界で見るとマイナーなんですよ。
外国では、歯並びの良さを重んじるため、
歯並びが良くない場合には多くの人が矯正治療を受けるそうです。
八重歯と同様に、過蓋咬合にも、
日本人特有の感覚として“可愛い“と感じられるところがあるようです。
過蓋咬合である場合、
下あごが小さく、すっきりとした小顔になる場合が多いです。
ネット検索で「過蓋咬合 芸能人」と調べると多くの女優が検索結果に出てきたりもします。
日本人の感覚として、
下顔面が小さいと、小顔で幼い顔立ちになり、それが可愛い!と感じる人が多いため、
「過蓋咬合は可愛い」と言われるのでしょう。
過蓋咬合は矯正しない方がいい?そう言われる理由は?
そのため、矯正治療を考える人はだいたい、
「見た目が気になるから」の理由が多いです。
「見た目は気にならないけど機能的に良くするために矯正治療を受けたい」
という人は、全体数で言うとどうしても少なめにはなります。
さきほども書きましたが、
過蓋咬合の場合は、歯がそこまででこぼこしているわけではなく、
見た目では気づきにくい不正咬合になります。
小顔でかわいい、かっこいい、と本人や周りが感じている場合は、わざわざ矯正治療をしようとは思わないかもしれません。
それに矯正治療をすることによって、噛み合わせが浅くなり機能的には良くなるのですが、
顔貌だけでいうと歯並びが変わり、顔貌が上下に長くなる(顔がのびる)傾向にあります。
それを良しとせず、矯正治療はしない方がいいのでは?と感じる人もいるようです。
見た目だけを考えるならその気持ちもわかります。
ただ過蓋咬合は、特に年齢を重ねてから問題が生じやすい噛み合わせです。
過蓋咬合によるデメリットと、
本当は改善した方が良い噛み合わせであることを知っていただいた上で、治療すべきか考えていただけると良いかなと思います。
過蓋咬合だとどんな問題がでるの?
過蓋咬合であることで、どんなことが起こりうるのか、お話ししますね。
〈過蓋咬合のデメリット〉
・奥歯に負担がかかる
…噛みあわせが深いことで奥歯に負担がかかり、奥歯がすり減ったり、欠けたり割れたりしやすくなります。
その結果、奥歯を早期に失うこともあります。
・上の前歯にもダメージを与えやすい
…下の前歯が上の前歯に強くあたることにより、上の前歯がダメージを受けやすいです。
また上の前歯が裏から押され、だんだん出っ歯になっていくこともあります。
・歯によって歯茎が傷つくこともある
…下の前歯の先端が、上の前歯の内側の歯茎にあたるほど噛み合わせが深い場合もあります。
その場合には、上の歯茎が炎症を起こすこともあります。
・詰め物や被せ物が外れやすい
…噛みあわせが深いことにより強い力がかかり、詰め物・被せ物・ブリッジ・入れ歯・インプラントなど色々なものが壊れやすくなります。
何度直してもまたすぐ外れる、壊れる…という人は噛み合わせに問題がある可能性が高いです。
・虫歯や歯周病のリスクが高くなる
…過蓋咬合は口呼吸になりやすいため、口腔内が乾燥して虫歯や歯周病にもなりやすくなります。
・ガミースマイルになりやすい
…笑った時に、上の歯茎部分が3ミリ以上見えるような状態を“ガミースマイル“といいます。
過蓋咬合の人はガミースマイルになりやすい傾向があります。
・顎関節症を起こしやすい
…噛みあわせが深いため、下あごの動きが制限されてしまい、顎関節に負担がかかり顎関節症になりやすくなります。
過蓋咬合であると、
正常の噛み合わせの人に比べると、このようなトラブルが起こるリスクが増えます。
過蓋咬合は自分でなおせるの?
過蓋咬合は残念ながら、自分でなおせるものではありません。
成人の場合、過蓋咬合をなおすには矯正治療が必要になります。
ただし、お子さんの場合はまだ顎が成長する時期なので、
食事のとり方を気をつけたり悪習癖を取り除くことにより、改善傾向にむかう場合もあります。
ですが、やはり噛み合わせが気になる場合は、矯正についても相談されると良いと思います。
ちなみに当院では、
小学生の低学年〜中学年頃のお子さんの歯の交換期に合わせて、顎の成長を促進させる矯正装置を使用しています。
この装置を使用して下顎を前方へ成長させることで、深い噛み合わせを改善させることができます。
この時期にしか出来ない治療です。
当院では、
第一期治療(小児期の矯正)だけで機能的な噛みあわせを確立して、治療を終了する(成人矯正である第二期治療は行わない)ことを目標にしています。
もちろん、歯並びによっては第二期治療が必要になる場合もありますが、
なるべく負担の少ない治療で終わらせて、大変な第二期治療はしなくても良いようにできたらと考えています。
ちなみに、
永久歯が全て生え揃ってからだと、よく行われるのはマルチブラケット装置というワイヤー矯正です。
過蓋咬合の場合は、伸びた歯を引っ込める(圧下させる)のが大変で、その分、治療期間も長くかかります。
また、歯に装置を固定するため歯ブラシも難しく、ブラケット周りが虫歯になってしまう人もいます。
ワイヤー矯正は過蓋咬合に効果的ですが、このように患者さんにはどうしても期間や手間がかかります。
なにより、大人になってからの矯正では歯の向きや並びは変えられても、あごの骨の成長を促すことはできません。
ですが、顎が成長段階のお子さんであれば、あごの骨の成長を促進させ、過蓋咬合の根本的な原因を解決することができます。
また、取り外すことができる装置なので歯磨きは通常通り行うことができます。
ただ注意点としては、装置は長時間つけないと効果はでません。
ですが、お子さんは装置への順応がはやく、違和感も少なく使ってもらえることが多いです。
ワイヤー矯正に比べれば、本人の負担はかなり少ないものになります。
この時期に過蓋咬合をなおしておくことで、
将来おこりうるトラブルを減らし、歯を長持ちさせることができますので、
お子さんのためにも矯正治療を考えられても良いかと思います。
過蓋咬合や歯並びにガタつきがあること自体は、絶対なおさないといけないものではないので、
保護者の方が「子供に矯正治療を受けさせないといけない」という責任を強く感じる必要はないと思います。
ただ、お子さんの限られた時期にしかできない治療なので、
もし気になる場合はお話だけでも出来ますので、ご相談くださいね。
過蓋咬合について、気になれば歯科医院へ!
過蓋咬合は、若い時はそこまで影響は出ませんが、年齢を重ねると問題が出てきやすい噛みあわせです。
もし健診などで「過蓋咬合」や「噛み合わせが深い」などと指摘された場合は、
もし可能であれば、矯正治療を検討していただくと良いかもしれません。
矯正治療をするかしないかの選択は、もちろん患者さん自身に決めていただくことです。
ですが、どちらを選ぶとしても、
ご自身やお子さんのお口の状態をよく知っておくことがとても大事だと思います。
この記事が、少しでもお役に立てれば嬉しいです!
以上、今回は過蓋咬合についてでした😊
また気になる方はドクターや衛生士にお声がけくださいね!